ページの先頭へ

                                            トップページに戻る
少年リスト  映画(邦題)リスト  国別(原題)リスト  年代順リスト

Éclair エクレア

マケドニア映画 (2016)

かつてユーゴスラビア最南端にあったマケドニアで作られた、ユーゴの独裁的支配者であったチトー終身大統領を風刺した上映時間30分のショートムービー。プリシュティナ国際映画祭でベスト・ショートムービーに選ばれた。見ていて何とも不合理で、愉快だったのは、チトーが国内に所有していたヴィラの1つのコックの女性が、いつチトーが抜き打ちでやってきても食事が出せるように、豪華な晩餐ディナーを1年365日、毎日作り、それを10年も続けてきたという状況設定。しかも、その料理は、チトーが来ないと、謎の政府機関が回収にきて、ヴィラで働いている人達は、食べるどころか、触れることすら一切禁じられている。とても あり得ない話だと思うのだが、チトーの独裁体制化だったら、ひょっとしてあったのかもと思わせるところが面白い。映画は、この奇妙なストーリーが、女性コックの10歳くらいの息子の視点から描かれていて、ヴィラの支配人の男性の可愛い10歳くらいの娘との淡い恋が、心地良い現実感を与えている。エクレアは、フランス生まれのデザートだが、このエクレアは、手を触れてはいけないデザート台の上に載っており、それを2人が、お互いのために盗み合うことで、親しみを増していく要になっている。映画の原題は、マケドニア語で『Еклер』だが、キリル文字なので、IMDbではフランス語表記されていて、ここではそれに準じている。なお、多くのウエブサイトで、製作国が北マケドニアとなっているが、マケドニアが北マケドニアと名称変更したのは2019年なので、この映画の製作時にはマケドニアだった。

映画は、1980年5月2日から4日にかけての3日間を描く。場所は、マケドニア、現在の北マケドニア。当時、マケドニアがユーゴスラビアの一部だった時、チトー大統領のヴィラが舞台。そこには、ヴィラの管理者の男性と、料理担当のコックの女性とその息子マルコ、部下の男のコック、守衛2人に女中2人がいる。第1日目、母は朝から大統領が明日にでも来られるということで、気張って料理を作っている。そこに、管理人の男性の娘アナが現われる。折角だから、大統領に会わせようという管理人の思惑で来させたもので、マルコとは初対面。2人は、近くの湖に行き、マルコがアナに意地悪をする。その日の夕食が食堂に用意されるが、それは大統領以外食べてはいけないものだが、アナと仲直りしようと思ったマルコは、政府の職員によって料理がすべて回収撤去される際、エクレアを1個盗んで、アナに進呈する。第2日目、全員が出迎える中、車が到着するが、中に乗っていたのは、事前監査にやって来た髭面の威張った男だった。男は、マルコの母が用意した料理にケチをつけ、それでも味見しようとして母に手を叩かれる。怒った男は、建物の外でブランデーを要求するが、それも規約違反。正義感に燃えるマルコは、ブランデーの入ったグラスをワザと倒して髭面男に殴られる。第3日目、全員が正装して出迎えようと並んでいるとサイレンの音が響き、建物の中に入ると、TVで大統領の死が伝えられる。髭面男は、大統領に用意してあった食事を食べようとするが、マルコは、テーブルクロスを引っ張って、すべての料理を床に落とす。一件落着の後、アナは1個だけ確保したエクレアをマルコに進呈し、マルコはそれを2つに割って、2人で仲良く食べる。

ある意味で、この映画の主役でもあるマルコ役のDavid Todosovskiは、『Osloboduvanje na Skopje(スコピエの解放)』(2016)という、マケドニアでのナチスによる支配とその終焉を描いた壮大な映画でも、大人に混じって6名の主役の1人として活躍している(下の写真)。

あらすじ

1980年5月2日の早朝、母は、ラジオの音量を上げ、体を踊らせながら高級料理の調理に励んでいる。その音で、一人息子のマルコが目を覚ます(1枚目の写真)。隣の母のベッドは当然空。母と子が1つの部屋ということは、あまり良い経済環境とは言えない。そして再び調理の場面。トレイに大きな魚2匹が入れられるので、これが母子の食事用とはとても思えない。母は、包丁をマイク代りに持って、ラジオに合わせて歌う(2枚目の写真)。そこは、キッチンというよりは厨房だ。マルコが着替えて厨房に入って行くと、そこには男のコックも働いているが、2人は挨拶も交わさないので、親子ではない。マルコは、レストラン用の大鍋の蓋を取って中を覗く。そして、コックが盛り付けている魚料理に顔を近づけて見る(3枚目の写真)。

テーブルの上の皿に、7種類の香辛料が山盛りにして置いてある。マルコは、一番手前の皿に積んであった赤い粉を指に付けて舐めてみる(1枚目の写真)。赤唐辛子だったのか、あまりの辛さに、目を白黒させて口を手で扇(あお)ぐ(2枚目の写真)。それに気付いた母は、香辛料のテーブルに座らせると、食パンの白い部分を少量口に押し込み、「噛んで」と命じた後で、「触るなって 何回言わせるの? あんたの食べ物じゃないでしょ」と叱る。男のコックが、「試してみたいのさ」と言うと、「私だって試してないのに、何でこの子が?」と強く反駁。男のコック:「ポタージュなら、いいのかい?」。母:「バカにしないで。子供の育て方について誰かに忠告を求めるとしても、あんたは最後の人間よ」。そう言うと、パンの載った皿をマルコの前に置き、「パンを噛んでれば、楽になるわ」と言う(3枚目の写真)。マルコは、パンを半分に割って、片方をズボンのポケットに突っ込む。

母は、持ち場に戻ると、男のコックに 「彼が来るって聞いたけど、本当だと思う? 狩猟肉が好きだと言う人がいる。魚だという人も。私、きっと若死にするわ」と言うが、何を言っても文句を言われるだけなので、男のコックは “独り言” だと思って黙っている。マルコが食べていると、開けっ放しになったドアの向こうを少女が歩いて行く(1枚目の写真)。それに気付いたマルコは、そのまま席を立ち、ドアから少女の後姿を見る。ドアの外は、幅が5メートルはありそうな総絨毯敷きの廊下になっていて、とても普通の家とは思えない。マルコは、そのまま少女の後を追う。絨毯の廊下の先は、石タイルの小広間になっていて、壁際には立ち上がった熊の剥製が置いてある。さらに追って行くと、鹿や猪の頭の剥製が並んだ壁に、天井には大型の近代的なシャンデリアも(2枚目の写真)。邸宅というよりは何かの施設に近い。その時、外から、「アナ、首のない鶏みたいに うろつき回るのは止めろ」と声がかかる。ドアの外には、背広を着た男性がいる。如何にも女中という服装をした若い女性が、アナを見て、「まあ、これ あなたの娘さん?」と訊く。そこに、母が男のコックを連れて出て来て、「トメ、なぜ娘さんが来るって言わなかったの?」と訊く。

そして、アナの頬に手を当て、「大きくなったわね。ハグさせてちょうだい」と言い、ハグした後で、「トメ、あんた、ちゃんと食べさせてるの?」と 強い調子で訊く。それを、ドアに隠れて聞いていたマルコは、思わず笑顔になる。母は、外に出て来る時、マルコが隠れていたのを見ているので、「マルコ、紹介するわ」と呼ぶ。トメ:「息子さん、いるのかね?」。母:「なぜ、彫刻みたいに そこに立ってるんだい?」。マルコは 恥ずかしそうに出て行く。母:「握手なさい、何で無作法で 困った子なの」。マルコは手を出す。どうしようかと迷っているアナに、父親は、「何をバカみたいに見てる? 握手して名前を言うんだ」と注意。アナは、「今日は、アナよ」と手を握る(2枚目の写真)。マルコは、うつむき加減のまま、「マルコだよ」と言い(3枚目の写真)、すぐにまたうつむく。母は、マルコに、「アナを案内してあげなさい」と言う。

いい仕事を仰せつかったマルコは、アナを連れて林の中の小道を案内し(1枚目の写真)、その先にある湖に連れて行く。湖に着いたマルコは、いつもやっているようにズボンを脱いで水着のパンツだけになると、そのまま水の中に入って行き、パンのかけらを水に投げる。アナは、靴と靴下を脱ぐと、水の中に少し入り、「なぜ、パンを投げてるの?」と訊く。「魚に餌をやってる。ここに集まってれば、釣りをする時、魚がちゃんといるだろ」。「水、冷たくないわね」。「うん。だから毎日泳いでる」。マルコは、シャツを脱ぐと、そのまま泳ぎ出す。そして、アナが、石集めに夢中になっていると、近づいてきて 急に水を浴びせる。びっくりしたアナは、ひっくり返って(3枚目の写真)、ずぶ濡れに。

怒ったアナは、濡れた服のまま、1人で林を抜けて館に戻る。林の入口で待っていたマルコの母は、それを見て、「5月2日に泳いだら、風邪引くわよ」と注意する。アナは 「マルコに驚かされて落ちたの。泳ぐつもりなんてなかったわ」と、強い調子で反論する。それを聞いた母は、湖まで小走りで下りて行くと、「もう3時よ。毎日呼びに来させる気? 出てらっしゃい」と命じ、後頭部を叩く(1枚目の写真)。そして、夜の晩餐の準備。母と 男のコックが何枚もの皿を大きなテーブルに持ってきて、セッティングを始め、アナにも手伝ってくれるよう頼む。アナは、張り切って手伝おうとするが、マルコは、「僕たち毎日テーブルにセットするんだけど、誰も座っちゃいけないんだ」と変なことを言う。「なら、どうしてセットするの?」。「そう命じられてるから」。アナがスプーンを皿の左に置くと、マルコは、正しい置き方を教える。セットが終わると、テーブルの中央には、母と男のコックが作った大皿に載った凝った料理が、何種類も置かれる。アナがいるので、どうなるか教えてやろうと、マルコが料理に手を伸ばすと、母がすぐにその手を叩き(2枚目の写真)、「触るんじゃない! 腕をへし折るよ!」と叱る。マルコは、冗談でやっただけなので笑う。晩餐の準備が完了すると、母は 「終わり。行きなさい」と、マルコを去らせる。1人残されたアナが、こっそりデザート台からエクレアを取るとすると、それを見越していたマルコが、そっと後ろから忍び寄り(3枚目の写真)、手をポンと叩いて アナを飛び上がらせる。

その日の2人の夕食は、厨房のテーブルで 母がレードルでスープ皿につけるレンズ豆のスープ(1枚目の写真)。それを見たマルコは、「レンズ豆は嫌いだ」と文句。母は、「食べないと、喉に押し込むわよ」と言うが、マルコはゲッと呻く。「食べ終わるまで、席を立つことは許しませんよ」。今度は、ゲッと吐き出し、そのまま席を立つと、母は 「すぐ戻りなさい! 戻らなかったら…」と言いかけるが、マルコは、それを制するように、「なら、どうするのさ? そんな、カスみたいな食事で、僕を育てる気?!」と 怒鳴るように言って、厨房を出て 晩餐の食堂に行く。そこでは、“誰も手を付けなかった豪華な食事” が、カートワゴンに乗せられている。テーブルの上には、デザート台だけが残っている。隠れて見ていたマルコは、作業中の2人の気が逸れた一瞬、デザート台まで走り寄ると、エクレアを1つ奪い(2枚目の写真)、そのままテーブルクロスの中に隠れる。そして、誰もいなくなると、テーブルの下から抜け出し、ちょうど前を通りかかったアナを連れて応接セットの裏に行き、エクレアをアナに渡す(3枚目の写真、矢印)。アナは、一口食べると、「あなたは?」は訊く。「1個取っただけだよ。君のために」。それを聞いたアナは、嬉しそうに残りを食べる。

マルコが、寝間着に着替えていると、母がアナを連れて寝室に入って来て、自分のベッドで寝るように言う。アナは、マルコの母に 「ネダおばさん、チトーさんはホントに明日みえるの?」と訊く。その言葉を聞くや否や、マルコはベッドの上に立ち、敬礼して、「今日は、元帥閣下。おいでいただき光栄です。僕たちは、10年お待ちしていました」と言う〔この2人の言葉で、この建物が、独裁者チトーが国の方々に作った贅沢なヴィラの1つで、10年間一度も訪れなかったことが分かる。チトーは1980年1月3日の検査入院後は壊疽のため入退院を繰り返し、1月20日に左脚を切断、2月に入ると腎臓が機能しなくなり肺炎、敗血症、黄疸、昏睡状態と悪化の一途を辿る。そのことは知らされていなかったのだろうか? 「ニューヨークタイムズ」の1980.1.22付けの記事には、1月21日の左足切断後の状態を、「8人の医師が良好な状態にある(8 DOCTORS SAY TITO IS IN GOOD CONDITION)」との標題で報じているが、その後 どう報道されたかは不明〕。母は、それを聞くと、マルコのベッドに座り、顔をマルコの顔に近づける。キスしろという催促だが、アナが見ているので、マルコは首を横に振る。しかし、母が もっと顔を近づけると、マルコは仕方なく 素早くキスする(2枚目の写真)。それを見たアナは、クスクス笑う(3枚目の写真)。

翌朝、建物の外で、トメが歓迎の挨拶の練習をしていると、守衛が口笛を吹く。車が敷地内に乗り入れた合図だ。トメは全員を呼ぶため、建物の中に駆け込む。アナが出て来て、「どうかしたの?」とマルコに尋ねる。「車が来たんだ」。赤い絨毯の前に全員が並んだ頃、メルセデスがゲートを開けて入って来て、奇抜な建物の前で停まる(1枚目の写真)。全員がチトー大統領だと期待したのだが、出てきたのは2人の眼鏡男。トメは、「お早う。突然、何のご用ですか? 元帥閣下が来られると聞いていました。大統領のために、綿密に準備をしてきたのですが、何のご用ですか?」と訊く(2枚目の写真)。「査閲だ」〔この地位の人間が大統領の容体を知らないハズはないので、映画は、実態から外れた “架空の話” だと思ってよいであろう〕。2人は食堂の中に入ってくる(3枚目の写真)。

ここで、納得できないのは、テーブルの上に晩餐の料理がすべて並べられていること。2人が到着したのは朝だったので、こんな早くに料理ができているハズがない。ひょっとしたら、料理の用意ができるまで、どこかで半日待っていたのかもしれないが… その前提で話を進めると、2人のうち、偉そうな髭面男は、晩餐テーブルの前に並んでいる4人の先頭に立っているマルコの母に向かって、料理の1つを指差し、「鰻か?」と訊く(1枚目の写真)。「そうです」。「元帥は鰻など食べん。お嫌いだ。肉がお好きだ。シーヴァス〔スコッチ〕を一緒に召しあがる」。そう言うと、鰻料理を味わってみようと手を伸ばす。すると、母が、髭面男の手をピシャリと叩く(2枚目の写真)。マルコは、自分ならまだしも、偉そうな人にも自分と同じことをしたので、びっくりして母を見る(3枚目の写真)。母は 「料理は元帥様のためのもので、何人も食べることは許されません」と、命令通りの応答をする。髭面男は、「外にテーブルがある。そこに、料理をすべて運べ」と命じるが、母も負けてはいない。「出せるのはソーセージだけです。それなら鰻に似てるでしょ」。その言葉にカッとなった髭面男は母を殴ろうとするが トメに力づくで止められる。

トメは、外のテーブルに座った髭面男に低姿勢で近づいて行くと、「申し訳ありません。我々は、ここで毎日料理を作っています。しかし、毎日、内部監査から担当者が来て、それをどこかへ持って行きます。誰も触れてはならないと言われています」と、事情を説明する。髭面男は、「あの子供たちは何だ?」と質問する。「少年は、料理人の息子で、ここに住むことが許されています。父親はおりません。女の子は私の娘です。元帥閣下に直接会わせたかったので連れて来ました」。そして、「コーヒーか何か 飲まれますか?」と訊く。「ブランデー」。「業務中は、飲んではならないことに」。「今は、ゲートが開いとるじゃないか」。トメは若い女中に持って来るよう命じる。それを見たマルコは一緒に中に入って行き、皿を適当に3枚取って後に続く。そして、トメが、グラスにブランデーを注ぐと、マルコは、皿をテーブルに置くフリをして、皿でグラスを倒し(2枚目の写真、矢印)、飛沫が髭面男のズボンにかかる。怒った髭面男は、すぐに立ち上がると、マルコの頭を殴る(3枚目の写真)。マルコは、そのまま逃げて行く。

マルコが 建物の隅で悔しくて泣いていると、一部始終を見ていたアナが同情してやって来て、肩に触る。「ほっといてくれ」。それでも、優しいアナは、マルコの横に座り(1枚目の写真)、「マルコ」と声を掛る。「どうしろって言うんだ。ほっとけよ」。そう言い放つと、マルコは立ち去る。その日の夜、アナが食堂に行って見ていると、確かに見知らぬ2人の男が、料理の皿を次々とカートワゴンに乗せている(2枚目の写真)。しばらくすると、そこにマルコも加わり、2人並んでその様子を見ている(3枚目の写真)。マルコはアナに囁き声で事情を話す。「昔は、毎日料理なんか作ってなかった。でも、一度、チトーが予告なしにやってきて、食べる物が何もなかった。チトーが欲しがったのはコヒーだけだったんで、母さんは、ラッキーだって話してた。それからなんだ。チトーがまた来た場合に備えて、毎日料理するようになったんだ」。明け方の厨房では、明日に備えて、母が調理を始めている。

そして、問題の 8月4日の朝。マルコが、シャツとパンツだけで部屋から出て来ると、それを見た女中が、「そんな恰好でどこ行くつもり?」と言い、アナが制服を着ている場所に連れて行く。そこで、さっそく女中はマルコのシャツを脱がせ、パンツだけにする。その、哀れな姿を見て、アナはクスクス笑う(1枚目の写真)。女中は、マルコにも制服を着せる。そして、2人を並べて立たせ、OKを出す(2枚目の写真)。2人が着ている服は、マケドニア語でСојузнапионерина Југославија(ユーゴスラビア・パイオニア連合)という 全少年少女が入らされた組織の制服。そして、2人を加えた全員が赤い絨毯の前に整列させられる。髭面男が最後にやって来て、全員を点検し、絨毯に一番近い場所に割り込み、全員が一歩ずつ右に寄る(3枚目の写真)。

マルコ達が整列させられたのは、朝だった。チトーの死亡時間は午後3時5分なので、ひょっとしたら7時間も立ちっ放しで待たされたのかもしれない。やがて、異常なサイレンの音が響き渡る。一番最初に動いたのは男のコックで、建物の中に走って行くと、TVを点ける。後を追うように全員が2階に駆け上がり、次々とTVの前に座ったり、立ったりする(1枚目の写真)。TVのアナウンサーは、「数分前、共産党中央委員会とユーゴスラビア社会主義連邦共和国の大統領府から発表がありました」と言った後、「チトー元帥が亡くなりました」と伝える(2枚目の写真)。それを聞いて泣き出す女性も数人。しかし、マルコの母だけは違った。「彼は 今日くるはずだった。ちきちょう! 誰が死なせたのよ! この10年、私は一体誰のために料理し続けてきたの?!」と、助手の男のコックに喚くと(3枚目の写真)、部屋を出て行ってしまう。

髭面男は、晩餐の食事が用意されたテーブルに座ると、料理に手を出そうとする。マルコの母はいないので、代わりにトメが、止めようとするが、髭面男は、「食べるぞ。彼は死んだんだ。サーブしろ」と、男のコックに命じる。そして、トメ、警備員、女中に席に座るよう促す。男のコックが、泣きながら肉を切っていると(1枚目の写真)、その光景を見たマルコが “こんなことは母が許さない” と確信し(2枚目の写真)、前に進み出ると、テーブルクロスの端をつかみ、引っ張り始める(3枚目の写真)。

それとともに、テーブルクロスに載った料理の皿もすべて動き始める(1枚目の写真)。髭面男は、立ち上がると、大声で怒鳴るが(2枚目の写真)〔後ろの鹿の角が “悪魔” らしさ象徴している〕、すべての料理はテーブルクロスと共に、床の上に転がり落ちる(3枚目の写真)〔後ろはチトーの肖像画〕

すべてが終わり、湖畔にマルコが座っていると、アナがエクレアを渡す(1枚目の写真、矢印)。マルコはそれを2つに割り(2枚目の写真)、仲良く2人で食べる。映画は、アナがマルコに軽くキスするところで終わる(3枚目の写真)。

   の先頭に戻る              の先頭に戻る
  マケドニア の先頭に戻る         2010年代後半 の先頭に戻る